枠組みを破壊する:世界的な感染流行はどのようにK–12 の教育指導のイノベーションを解き放ったのか

Coronavirus

枠組みを破壊する:世界的な感染流行はどのようにK–12 の教育指導のイノベーションを解き放ったのか

2020年初頭、新型コロナウイルスの世界的な感染流行が世界を閉ざし、一連のオンライン学習のトレンドはそれまでは想像もできなかった方向に進むことになる。

Global Education Insights

以下の掲載文はCFIのGlobal Education Insightsと言うシリーズの承諾を得て翻訳したものです。

引用元: Christensen Institute

筆者: トーマス・アーネット

投稿日: 2021年1月11日

読了にかかる時間(推定): 5分


序文

過去10年間にわたり、少しずつであるが確実に、幼稚園から高校までの教育機関においてオンライン学習が担う役割は広がってきた。多くの学区で機材を導入して通信環境を改善し、いくつかの授業科目と教科書はクラウドに移され、ソフトウェアが問題用紙の代わりになり、インターネットによる調べ学習は慣習となった。そして2020年初頭、新型コロナウイルスの世界的な感染流行が世界を閉ざし、一連のオンライン学習のトレンドはそれまでは想像もできなかった方向に進むことになる。

ほぼ一夜のうちに、COVID-19の流行によって、何世紀もの間学校教育の象徴であり続けた教室で行われる教育指導は突然中止に追い込まれることになった。幸いなことに、その頃はブロードバンド接続、モバイル通信、ビデオ会議がより一般的になっている先端技術が発達した時代であり、それはすなわち、世界史上で初めて、レンガとモルタルでできた校舎が閉鎖されている間も学校が教育指導を続けるための実践的な方法を持っていることを意味していた。とはいえ、大方の見方ではオンラインへの移行は容易ではなかった。

クリステンセン研究所では、過去10年間にわたり、生徒中心の学習の実現に焦点を当ててオンライン型学習とブレンド型学習の傾向について研究してきた。しかし、我々が予想もしない方向で、COVID-19がこれらの学習様式を教育の最前線に押し出した。この新しい現実が広がっていく中、我々は、アメリカのK-12教育の現場全体で起こっている課題とイノベーションの両方を記録していくことになる。

この分野での我々の最新の研究として、後に国を代表して行われることになる教師と管理職に対する一連の調査から着手し、パンデミックの状況下における指導慣行の全体像を捉えることとなった。なお、最初の調査の結果と、調査方法とサンプルに関する詳細情報は、添付のレポートで確認できる。この概要は、最初の調査によって得られた興味深い調査結果を示しており、今後数年間のうちに教育の再定義につながるかもしれない教育実践の傾向について議論を投げかけ、パンデミックの状況下で強化しながら、より生徒中心の未来に向けて進化するための理論に基づいた考察と提言を提供することになるだろう。

COVID-19下での教育指導の様相:オンライン上に存在する従来の教室

我々の最初の調査で得られたデータには、パンデミックの状況下での傾向が詳細にまとめられていた。COVID-19の感染流行を防ぐための措置により、リモート型とハイブリッド型の教育指導がニューノーマルとなった。しかし、我々の調査では、現在のリモート型及びハイブリッド型教育に関するアプローチの多くが、従来の教室での体験をオンラインで再現することを目指すものであるという現実が浮き彫りになった。

教室の中での教育指導は、本質的には「リアルな体験」と言えるが、リモート型の教育指導には、程度の差はあるものの、同期型および非同期型のコミュニケーションが交わされる。教育指導のうち同期型および非同期型のコミュニケーションの量について教師に尋ねると、ほぼ半数から通常の学校の授業日と同じ程度のその場で行う同期型のコミュニケーションを交わしているという回答を得た。

さらに、教師が使用する教材やテクノロジーは、同期型のコミュニケーションが主体の指導を目的としたものである傾向が見られた。非同期型学習の対応に役立つリモート型の教育指導用に設計された商用教材を使用していたのはわずか22%の教師だけだった。その代わり大半は教育指導に使用するリソースを自分で考案し、従来の教室内でのカリキュラムをリモート型の教育指導に取り入れるか、様々なオンラインの媒体から教材を収集していた。同様に、教師が最も使用するテクノロジーは、学習管理システムやビデオストリーミングなど従来の教室内での授業をクラウドに移行させるためによく利用されるものだった。それとは対照的に、習熟度に焦点を当てた学習や個別学習向けの活路となるツールなど生徒中心の学習の実践を促進するためのものはほとんど普及していなかった。

総じて、多くの教師がビデオ対話を通して従来の教室が主体の教育指導を再現しようとしていたという顕著な傾向が調査データにより明らかになった。

イノベーションの考察:

習熟度に焦点を当てた学習や個別学習向けの活路になる等、オンライン学習が可能にする生徒中心の教育戦略がどれだけ有望かを考えると、教師が従来の教育慣行をオンラインで再現する傾向にあるのは、絶好の機会を逃しているように思える。しかしながら、従来の教育指導に対するこのバイアスは、教育指導者が直面する現実的な得失の問題を考えると、完全に理にかなっている。教師と学校は前例のない課題に立ち向かっており、革新的な指導方法に備えるための時間はほとんどなかった。この様な差し迫った状況下では、リモート型の教育指導によく知られている従来の慣行を取り入れるという考え方は、全く新しい生徒中心のアプローチを模索して実践しようとするよりもはるかに簡単で確実だろう。

生徒中心の教育慣行が広く普及するには、リモート型のオンライン教育指導へと大きく舵を切る時以上に時間がかかると考えられる。オンライン学習は生徒中心の学習を促進することはできるものの、本質的には生徒中心ではない。

提言:

教師が指導の実践方法を変える理由に関する過去の研究に基づくと、COVID-19のパンデミックの間に教師がより生徒中心の学習方法を採用していく後押しをする主な道筋が2つ挙げられる。

一つ目は、これまで以上に多くの教師に対して、生徒中心の学習に向けて段階的に取り組みを進めていく支援をしていくこと。調査結果が示すように、ほとんどの教師はリモート型の教育指導に従来の教室が主体の教育慣行を取り入れようとする傾向がある。

だたしその際に、新しい教育慣行により、教師がより適切に教材をカバーし、生徒を惹きつけるのに役立つ実用的な方法を会得できれば、生徒中心の学習は教育現場でのレパートリーの一つになり得る。生徒中心の学習方法を促すためには、管理職が教師に対して、その方法の会得を容易にしつつ簡単に教育指導に組み込むことができるようになるためのツールと実践の場を提供する必要がある。例えば、教師がビデオ対話を通じて行った授業の内容を記録し、生徒たちが各々のペースで授業内容を確認できる様にその授業の動画をオンラインで投稿するよう、管理職から教師に勧めることもできる。同様に、エドテック(教育技術)企業は、教師がオンライン授業を強化し、生徒と共有できるよう、簡単に使用できるツールを提供していく必要がある。

二つ目の道筋は、従来型の教育実践法が根本的に破綻したと考えるようになった教師を探し出して支援すること。パンデミックにおける試行錯誤が続く中、一部の教師の中には生徒のニーズに対応できていないと感じる者もいるだろう。その時点で、彼らはプロとしての重要な選択を迫られる局面に差し掛かることになる。それは、教育指導の体系を一新する、もしくは現在の担当教科と決別するしかないと考えることだ。学校や学区がそういった教師たちに新しいアプローチを試す手助けをしたり、そのための道筋を示したりできれば、彼らは前者の選択肢を取り、授業そのものを根底から覆すか、自身が担当する科目の授業を習熟度に焦点を当てた学習や生徒中心の学習実践に切り替えるだろう。しかし、勤務する学校や学区が、そのような教師たちに厳格に定められた計画に従うことを期待する場合、彼らはラーニングポッド(学習グループ)を率いたり、自分でマイクロスクール(少人数制の個別化教育を提供する私立学校)を始めたり、教えることを完全に放棄するなど、その学区外での選択肢を模索するだろう。教師たちが試行錯誤できる余地をシステム内に構築できる学校制度の統括者こそが、意欲的な教師たちの確保と革新的な教育実践のための試金石を見出すことの両面で成功できるのだ。

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